(この文章は2013年4月9日に書いたものです)
将棋は逆転の多いゲームだ。
そうはいっても、まさかプロ棋士とコンピュータの対局でここまでの逆転劇が起こるとは思っていなかった。
夕方に家に帰って対局を観ると、すでに終盤の佳境に入っていて、船江恒平五段が圧倒的に不利だと解説者のプロ棋士(鈴木大介八段)が分析していた。
今回の電王戦では、対戦者のどちらが優勢かの評価値が常に表示されているのだが(この評価値はあるコンピュータソフトが出しているのもので、絶対に正しいというわけではない)、その時点で船江五段のー995点だった。
ほぼコンピュータは間違えることがないといわれている終盤で、千点近くのマイナスから逆転するのはプロ棋士といえども厳しいと思った。
しかし、船江五段はそこから巧みに差し回して、形勢は逆転して、圧倒的に有利になった。優勢になってからも焦らずに攻めずに落ち着いてポイントを稼いで、盤石の態勢を築いた。
人間同士の戦いだったら、投了してもおかしくないぐらいの差がついた。
だが、そこからコンピュータ・ツツカナの粘りが凄かった。
自陣に底歩を打ち、王の周りに金を打ち、王を早逃げし、ひたすらガードを固めた。
そこで船江五段にミスが出た。(それは、プロレベルの人しか気付かないような、ほんのわずかなミスだ)
あっという間に形勢が入れ換わり、ツツカナが勝利した。
「あきらめたらそこで試合終了だよ」
という、漫画『スラムダンク』の有名な名言がある。
この言葉に救われた人は、たくさんいると思う。
だが、コンピュータにはそもそも、「あきらめる」という概念がない。
どんなに自分が不利な局面になっても、その場その場で最善の手を指し続ける。
過去を後悔したり、未来を不安がったりせずに、瞬間瞬間に全力をつくす。
それは、禅の思想に似ている。
圧倒的に劣勢の局面で、必死に勝ちを目指して粘っているツツカナの差し回しをみて、意志の強い人間が指しているみたいだ、と思った。
感情を持っていないことが強みになることがある、ということを、今回の対局を観て痛感した。
それでも、感情を持っていることの強みも絶対にある。
コンピュータは、将棋を指していて楽しいのだろうか。
楽しんでいる奴が最後には勝つ、というのが僕の信条の一つだ。
だから、将棋の楽しさを知っている人間にコンピュータを倒してもらい、将棋の楽しさと奥深さをコンピュータに教えてあげてほしいのだ。
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