短編小説は、長編小説に比べてあまり売れないそうだ。
だから作家として食べていくには、長編を書かないと基本的にはダメなのだそうで、筒井康隆氏もデビューする前に、面白い短編はいくつも書けたがなかなか長編が書けなくて苦労したらしい。
ただ短編小説でも売れやすいパターンがあって、いわゆる連作短編である。同じキャラクターが毎回出てくるもので、最近のベストセラーでいえば、『謎解きはディナーのあとで』や『鍵のかかった部屋』のような作品だろう。
つまり、短編で売れにくいというデメリットを、キャラ萌えでカバーしているのである。
キャラクターを固定した短編集にももちろん魅力があるが(たとえばアシモフの黒後家蜘蛛の会シリーズは、あのメンバーたちが出てきてダラダラ喋っているだけでワクワクする)、連作短編でなく、全編違ったバラバラの作品が収録されている短編集には、また別の魅力がある。
何よりも、さまざまな趣向の作品を、一冊の本にまとめられるというのが大きい。
フレドリック・ブラウンの『まっ白な嘘』は、「アイデアの宝石箱や~!!」と言いたくなるよな、連作ではないミステリーの短編集である。
一話目で雪に足跡が残っていない密室トリックをいきなり出してきたかと思ったら、聞く人の誰もいない森の奥で木が倒れたらそれは無音であろうか、という思想的な話から事件につながる話もあれば、サスペンス要素のある話もサイコ的な話もあり、あっと驚く叙述トリックもメタ的な物語もユーモラスなオチも出てくる。
毎回騙されないようにしようと身構えながら読んでいても、まったく違った方向から攻めてきて驚かされてしまう。
まるでミステリーの短編集のお手本のような本であり、こういう本にときどき出会えるから、短編小説を読むのはやめられない。
フレドリック・ブラウンとはどんな作家か【おすすめ作品は『まっ白な嘘』】
フレドリック・ウィリアム・ブラウンは、アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティ生まれの小説家、SF作家、推理作家。ユーモアあふれるショートショート作品で知られており、巧妙なプロットと驚くような結末が特徴である。ユーモアやポストモダン的作風は長編にも現れている。代表作『シカゴ・ブルース』
wikipediaより引用
●おすすめ関連記事
→kindle unlimited(キンドルアンリミテッド)は読書家におススメ【 Prime Readingとの違い】
→『ぼぎわんが、来る』澤村伊智~日常と非日常の恐怖の融合~はコチラ
→『君たちはどう生きるか』の次に流行る古典はこれだ! 『細雪』谷崎潤一郎はコチラ
コメントを残す