今年読んだ小説で、今のところ文句なくベスト1です。
ほとんどパーフェクトな作品だと思うのですが、強いて言うならばタイトルが少しもったいない気がしますね。
このタイトルだと、なんかちょっと地味でシュールな純文学っぽい雰囲気が出てしまい(僕も読むまでそういう本だと思っていた)、手に取る人が減ってしまうのではないでしょうか?
実際は、ハラハラするサスペンス的要素が多いんですけどね。
佐藤正午氏の作品を読み始めたのは最近なのですが、いきなり『鳩の撃退法』から読まないほうがいいと思います。
まずは直木賞を受賞した『月の満ち欠け』を読んでもらい(こっちもかなりどきどきした。『鳩』に比べればとっつきやすい)、少し耐性ができてきてから、『鳩』を読むと。
これは、新海誠監督の作品で、まずは『君の名は。』を観てから 『秒速5センチメートル』を観たほうがいいのと似ている気がしますね。
まあいきなりガツンといきたい方は、『鳩』から読んでもいいのでしょうけど。
『鳩の撃退法』にも『月の満ち欠け』にも共通する構成として、時間軸のシャッフルがあります。
過去の回想が始まり、また現代に戻って、今度は違う過去に行ったりして、わざと混乱するような時間軸で書いてあり、さらにそこにいろいろな登場人物がリンクしていき、物語が拡散して連結して、現実と虚構とが混ざり合って、あ、だからあのときあの人はあんなことをしたのか、とあとで分かったりしながらも、じゃああの場面は結局なんなんだ、と分からないことも残ったままだったりで、何が何だか分からなくなっていく混沌さを楽しめます。
映画だったらタランティーノみたいに時間軸をずらしたりするのはたまにありますが、小説でここまで複雑な構成にしている作品は珍しい気がしますね。
昔読んだ何かの小説執筆マニュアル本に、
「小説は時間軸をずらさずに、順番に起こったことを書いていけ」
と書いてあったのですが、あれは嘘ですね。
事件を時系列に書くよりも、順番をシャッフルして書いた方が面白くなる場合もあるということがよく分かりました。(かなりのテクニックを要するとは思いますが)
そして『鳩』を読むと、たくさん本を読んでいる人が書いた作品なんだなあ、ということがよく分かります。
たくさん本を読んでいなくても面白い小説は書けると思うのですが、たくさん本を読んでいないと出せない深みみたいなものが確かにあって、僕はそういう小説が好きですね。
というわけで、しばらく佐藤正午作品を読みまくることになりそうです。
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