21世紀の新しい職業「喜ばせ屋」




新しい職業を考えました。
『喜ばせ屋』という仕事です。

喜ばせ屋の給料は、国や県や街から支払われます。贅沢はできないけど、不自由なく食べていけるくらいの金額です。

一日の労働時間は八時間ですが、フレックスタイム制です。
昼過ぎに起きてもかまいません。

喜ばせ屋のある一日を想像してみましょう。

その日彼は昼近くに起きます。

「さあ、今日も誰かを喜ばせるぞ!」

とやる気満々です。

彼は外に出かけてみます。この段階では、その日何をやるかは決まっていません。人を喜ばせることなら、何をしてもいいのです。自分が楽しめることをやっていいのです。

街をプラプラ歩いていると、地図を持って道を探している外国人がいました。

喜ばせ屋は、「おっ仕事だ仕事だ」と、その外国人に近づいていきます。
最近勉強を始めたカタコトの英語で、彼は外国人に道案内をします。
せっかくなので、この街の面白いスポットを紹介しながら一緒に観光します。

外国人に「サンキュー」と感謝されて別れたあと、彼は公園に行ってみます。
そこで子供たちが、かくれんぼをしようとしていますが、誰も鬼がやりたくなくて喧嘩をしています。

喜ばせ屋は子供たちのところへ行き、「鬼をやってあげるよ」と提案します。
そしてかくれんぼを一緒にやり、子供たちは楽しんでくれました。

そのあと夜ご飯を定食屋で食べていると、店長がなにやら困っています。
新メニューのアイデアがなかなか決まらないらしいのです。

喜ばせ屋は一生懸命、新メニューを店長と一緒に考えます。

「ゴーヤチャンプルとソーキソバを混ぜるのはどうでしょう?」

喜ばせ屋がそう言うと、「うん、いちかばちか、それでやってみよう」と店長に喜ばれます。

他にも歩きながらゴミを拾ったり、写真を撮ってあげたり、人が喜んでくれそうなことをやりながら家に帰ります。

「あ、今日は七時間半しか人を喜ばせてないぞ」と家に着いてから喜ばせ屋は気付きます。労働時間は八時間が一応の決まりです。

そこで、喜ばせ屋は、今日あった面白いことを30分かけてブログに書きます。

喜ばせ屋のブログを読んで喜んでくれる人が何人かいるので、これも労働時間にカウントされるのです。

喜ばせ屋は、明日はどんなことをして人を喜ばせようか考えながら眠りにつきます。
そうだ、明日は近所の老人ホームに将棋を教えに行こう。きっと喜んでくれるぞ、むにゃむにゃ。

そうして、喜ばせ屋の一日は終わります。

もし、こんな職業があったら、僕は真っ先に立候補するんですけどね。

 

 

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