まず、映画評論集なのにもかかわらず、映画についてほとんど書いていないのが、奇跡的だ。
書かれているのは、筆者の、文章を書くことに対する辛さの愚痴や、金がないという悲痛な叫びや、某政治家への呪詛の言葉など。
そして、ときどき映画についてもちょっと書く、という感じ。
映画について書かずに、映画連載を続けるというとんでもない芸当をこなせるのは、中原昌也氏しかいない。
雑誌『SPA!』に連載されていた内容を、本にまとめた第二作目が、この『続・エーガ界に捧ぐ』である。
イラストはリリー・フランキー氏が担当していて、僕にとっては、理想のタッグだ。
この本には、中原氏とリリー氏の対談が収録されているので(何回読み返したことか!!)、引用してみます。
リリー「しかしこの連載もさ、映画コラムと思ってる人はもういないよね」
中原「いやー、そうですかねぇ」
リリー「映画が変わっても、怒ってることは変わってなかったりするじゃん。あれは凄いよね。あれは純文学だよ(笑)」
中原「ありがとうございます、っていうのもあれですけど(笑)何か怒りの対象があって、それをじーっと睨みつけているその横を車が通り過ぎるみたいなことですよ。車が映画で(笑)」
映画について書いてある量は少ないが、映画の評論は完璧に信頼できる。
この本で絶賛されている作品を、いくつか挙げてみることにする。
『月曜日に乾杯』 オタール・イオセリアーニ監督
『パンチドランクラブ』 ポール・トーマス・アンダーソン監督
『スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする』 デイヴィッド・クローネンバーグ監督
『月の砂漠』 青山真治監督
『ライフ・アクアティック』 ウェス・アンダーソン監督
『ミスティック・リバー』 クリント・イーストウッド監督
『ヴィレッジ』 M・ナイト・シャマラン監督
『ジェリー』 ガス・ヴァン・サント監督
『トーク・トゥー・ハー』 ペドロ・アルモドバル監督
『犬猫』 井口奈己監督
『ファム・ファタール』 ブライアン・デ・パルマ監督
うーん…。凄すぎるラインナップだ。何か面白い映画を探している方がいたら是非!
中原氏が紹介している映画を僕は何百本も観てきて、大変楽しいときを過ごせたので(ごくたまにピンとこない作品もあったが…)もし中原氏に出会えていなかったらと思うと、ゾッとする。
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