壮大な長編小説には大きく分けて二種類あって、ひとつは、起承転結がしっかりしていて、物語が一本につながっている小説。
もうひとつは、小さなエピソードを組み合わせていって、それを積み重ねることによって、ひとつの奇跡的な小説が出来上がるというケース。こちらのパターンのほうがたぶんレアで、面白くするのは難しいと思う。
谷崎潤一郎の『細雪』は、後者の、エピソードを組み合わせて出来上がっている小説です。
『細雪』は四人姉妹がそれぞれ、お見合いしたり、振られたり、振ったりと、いろいろ恋愛で右往左往する話が延々とつづられている。文庫本で三冊も。
あらすじだけ聞くと、そんなにそそられないかもしれないけれど、読み始めたら一気にはまります。
それは谷崎の文章の洗練さのせいかもしれないし、一つ一つのエピソードの作り方が抜群にうまいからだと思う。たとえば、ミステリー小説だったら、後半は盛り上がるけど中盤はだれたりするときがよくあるけど、この作品は、最初から最後まで、ずっと面白い。
谷崎作品には、ほかにも、やり手の少女に翻弄される男を描いた『痴人の愛』とか、盲目の女性に献身的に仕える男を描いた『春琴抄』とか、傑作はたくさんありますが、僕が一番好きなのはこの『細雪』です。
ロシアに『カラマーゾフの兄弟』があり、コロンビアに『百年の孤独』があり、イギリスに『ユリシーズ』があり(これまだ読んでないです…長すぎる)、フランスに『失われた時を求めて』があるように、(これも未読。長すぎでしょ!でもいつか読みたい)日本には、『細雪』があるんです。
最近『君たちはどう生きるか』が売れたりと、古典ブームの兆しがみえていますが、谷崎潤一郎は、今の時代、もっと流行ったっておかしくないと思う。
谷崎潤一郎とはどんな作家か
初期は耽美主義の一派とされ、過剰なほどの女性愛やマゾヒズムなどのスキャンダラスな文脈で語られることが少なくないが、その作風や題材、文体・表現は生涯にわたって様々に変遷した。漢語や雅語から俗語や方言までを使いこなす端麗な文章と、作品ごとにがらりと変わる巧みな語り口が特徴。
(Wikipediaより引用)
代表作に『細雪』『痴人の愛』『春琴抄』『刺青』などがあって、日本の文豪(夏目漱石とか太宰治とか芥川龍之介とか)の中で、僕が一番好きな作家ですね。
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