小説のアイデアの生まれ方~第1回~「実体験に嘘を混ぜる」




小説に何を書けばいいか、ってのは難しい問題だと思うんですけど、執筆マニュアル本に良く載っているアドバイスで、

「自分のことを書きなさい」

っていうのがあるんですね。

僕はこのアドバイスは、半分本当で、半分嘘だと思ってるのですが…。

 

たとえば、『ホームレス中学生』って小説がありましたよね。

僕は読んでないんですけど、あの小説はインパクトがあるし売れるのも分かるんです。

こういう作品が、実体験で書いてうまくいった例ですよね。

ただほとんどの人は、そんなに特別な経験してないわけですよ。

だから中学時代の話をそのまま書くとしたら、

 

「二世帯住宅中学生」とか「個室あり中学生」になるわけですよね。

 

この作品は、それほど面白くないですよね。

 

たとえば八百屋で働いている人が実体験をそのまま書くとしますよね。

「今日はダイコンが7本売れた。昨日は8本売れたのに1本減ってしまった。なぜだろう。ダイコン足のお母ちゃんに相談してみるか。おっと、こんなことを俺が言ってるのがばれたら、また大目玉でこづかい減らされちまう」

みたいな話を書いても、誰が読むんだって話ですよね。

なので、ここに嘘を加えてみます。



 

八百屋の真横に、ある日、大型スーパーができたとします。

 

これで、一気にドラマが生まれますよね。

今まで来ていた客は、一斉に安い大型スーパーに流れる。

八百屋は閑古鳥が鳴いて、「このままじゃ店が潰れちまうよ」って夫婦で嘆いているときに、

 

「ダイコンください」

 

っておばあさんがやってくる。

「岸沢さん!うちで買っていいんですか?大型スーパーの方が安いじゃないですか?」

「いやいや、私はあんたんとこでずっとお世話になってたんだから、これからもずっとあんたんとこで買っていくよ」

という感じで、奥田英朗風の、人情ドラマが描けるかもしれませんね。




他にも、八百屋は結局、大型スーパーのせいで、潰れるとします。

八百屋の店長が大型スーパーの店長を恨んで、嫌がらせをしたりストーカーをしたりして、スーパーの店長を脅かしていくと。

こういう話にすれば、パトリシア・ハイスミスばりのサスペンス小説になりますよね。



別のパターンとして、八百屋に急遽、ハーバード大学からの留学生(経営学部)がバイトでやってくると。

そのバイトが、大型スーパーから客を取り戻すために、いろいろ計算式とか使って戦略を練っていくわけです。

「3丁目の高木さんの家は五人家族だから、カレーを作るときはじゃがいも1個、にんじん1本、玉ねぎ2個がちょうどいい量です。こうやって、家庭ごとに野菜をセットで割引価格で売るのはどうでしょう。これはひとりひとりのお客と直に対面できる、八百屋ならではのサービスです。大型スーパーにはできないものです」

みたいな感じで、ハーバードの留学生がどんどん新サービスを打ち立てていき、最終的に大型スーパーを倒していく。

これなんかは『マネーボール』的なハリウッド映画になりそうですよね。



で、今ぱーっと、適当に嘘を交えたストーリーを考えましたが、この小説は僕が書いても面白くならないんです。

なぜかというと、僕は八百屋のことを知らないからです。

僕が書くと、全部嘘になっちゃうんですね。

全部嘘の話って、リアリティがなくて面白くないんですよ。

ただ実際に八百屋をやっている人が書いたら、仕入れの問題とか、客との会話にリアリティができてきますから、「真実に裏打ちされた嘘」を書けるので、面白くなるんです。

こういうやり方をしていけば、誰でも実体験に嘘を交えて書いていくことで、小説のアイデアは無数に生まれていくと思います。

そしてその作品は、実際にその体験をした、あなたにしか書けないものなんです。

 

ショートショートのアイデアの考え方をnoteに書きました!

デパルマ三世
「小説現代ショートショートコンテスト」に入選した僕の作品を題材にして、ショートショートのif系のアイデアの膨らませ方と、意外性のある結末の作り方について解説しています!

 

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