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『できるビジネスマンは、なぜダジャレが得意なのか?』(架空書評)




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『できるビジネスマンは、なぜダジャレが得意なのか?』二階堂 正貴 著

ダジャレがうまいサラリーマンとそうでないサラリーマンで、年収に二百万円以上の差があることがハーバード大学の調査で判明したニュースは、皆様もよくご存知の通りだ。
本書はその原因を解明するとともに、ダジャレの新たな可能性を提示することに成功している。

 『ダジャレは高度な言語ゲームである』というのが著者の信条であり、そのことを裏付けるように、第一章ではダジャレの歴史が考察されている。ダジャレがふっと湧いて出た軽薄な文化などではなく、歴史的にも知的な文化であったことが明らかにされていく。
平安時代の和歌による「掛詞」がダジャレの発端だという多くの読者の予想を裏切り、すでに縄文時代からダジャレが浸透していた(「土器」と「ドキドキ」の組み合わせなど)、という議論を引き出すあたりは、本書の白眉とも言える。

 第二章ではダジャレの構造分析が行われる。優れたダジャレとそうでないダジャレとの差異を、著者は論理的に証明してみせる。以下、本文を引用してみよう。

『「お金がないのにウニを買いそうになるなあ」
 これは「21世紀で最も美しいダジャレだ」とディレクソン氏が絶賛したダジャレである。では、なぜこのダジャレがそんなに優れているのだろうか?これは「ウニ」という名詞に呼応する箇所が、「買いそうに」という、意志を表す助詞の「う」と、格助詞の「に」の組み合わせで表したことにある。
 つまりこの瞬間に、「買いそうに」という言葉の階層を回想せざる得ないわけで、この快走するダジャレに我々の感情は海草のようにユラユラと浮遊することは言わずもがなである。すなわち優れたダジャレは、言語の意味を脱構築し、新たな意味を創り出す力を持っているのだ。』

このように、著者自身もダジャレを駆使しながらダジャレについて解説する文章は、あなたに新しい読書体験をもたらすであろう。ダジャレの分析をしている本には、「ダジャレをの分析をするぐらいならお前は面白いダジャレが言えるのか!」と言いたくなるものも多いが、本書についてはそういうツッコミはしにくいことは明らかだ。

第三章では、ダジャレを考えるときの脳の動きがいかにビジネスに応用できるかが、いくつもの実例により紹介されていく。
ダジャレを連想する力と企画会議でのアイデアを出す力の相関関係や、ダジャレの二つの言葉を結ぶ力とビジネスでの取引先とのコミュニケーション力の因果関係など、言われてみればなぜ今まで気付かなかったのかと思われるような事実が、鮮やかな手際で導き出されていく。

そして最終章の第四章では、ダジャレの未来が予言される。
素晴らしいダジャレがたくさん生まれれば世界に平和が訪れるかもしれない、と熱く語る著者に思わず喝采を叫びたくなるのは、おそらく私だけではないはずだ。著者は果敢にも、ダジャレを宗教的両義性(この場合の単語の意味はバタイユが使う意味とは異なることに注意せよ)の充満した現象に翻訳しようとしているのだ。

本書を読んで痛感したことは、ダジャレと向き合うことを避けられない時代に我々が完全に突入したということだ。本書を読み、「ダジャレとは何か?そして、人間とは何か?」という根源的な問題を、真剣に考えるきっかけにしてほしい。
いくらダジャレを放棄しようとも、人間は人間のままなのだから。

 

2018年7月 ハワイのホテルにて、夕陽を眺めながら
文芸評論家 藤堂新三郎






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