執筆ハウツー本はどんなものがおススメか
小説を書くためのハウツー本はたくさんありますが、やはり実際に面白い小説を書いている作家の本が一番参考になると思います。
この本では冲方丁(うぶかたとう)氏(本屋大賞を受賞した『天地明察』は最高に感動しました!)の今まで書いた小説(『マルドゥック・スクランブル』など)が、どのような手順で書かれていったかがこと細かに書いてあるのですが、一番驚いたのは、小説を書く前にここまで綿密なプロットや設定を考えるものなんだ、ということですね。
もういい加減に書きたいよ、と思ってしまうぐらいまで、小説の最初の一行目を書き始めるまでに徹底的に作品の下書きを書いています。
よく、
「小説は書き始める前にプロットを決めてしまうと予定調和になって面白くない。書きながら物語を考えて、キャラクターが勝手に動き出すのを待つんだ」
みたいなことを言っている作家がいますが、あれは大げさに言っているか、もしくは本当だとしてもかなりの少数派だと思います。
下書きをノートに書いているかどうかまでは知りませんが、ある程度は頭の中にあらすじができていないと小説なんて完成できないですよ。特に長い小説は。まあ、純文学的なストーリーがほとんどない作品はまた別ですが、エンタメ小説では難しいでしょう(桐野夏生氏みたいに、あらすじを考えずに書ける作家もまれに存在するのですが、あのやり方はベテラン用でしょう)。
あと僕もいくつか小説を書いてみて思ったのが、プロットやキャラの設定やラストのオチとか、下書きをめいいっぱい書き出してから小説を書いても、決して作品が予定調和になんかならないんですよね。
ラストは決まっていてもそこにいくまでの書き方で自分でも予想していなかった展開になったりするので、書いていて充分楽しめるし、最初に思っていたのとはだいぶ違う作品になって驚いたりします。
というわけで、下書きの重要性をこの本でもかなり説いているんですが、冲方流の用語が面白いし参考になります。
一番参考になった「種書き」について引用してみます。
【種書き】
まず、これから書こうとするモノについて、漠然としたイメージをはっきりさせるため、とにかく言葉にしてゆきます。
それを、僕は「種書き」と呼んでいます。何か作品の種になるようなアイディア・言葉・イメージなどを探り当てる作業です。
この作業では、あまりパソコンは使いません。ノートやらルーズリーフやら裏紙やらチラシの裏やらに、ごちゃごちゃ書いてゆきます。
参考文献を読み漁り、いろいろな情報を、役に立つ立たないはさておいてメモります。
ほぼ文章になっていません。ラフスケッチのさらにラフな感じです。メモ1
少女。戦闘。葛藤。闘争と逃走。ラストチャンス的な。
十四、五歳の女の子を主人公にしてアクションさせるということ。
オズの魔法使い。不思議の国のアリス。少女的なイメージ。どれも男の目によるもの。
少女の内面。少女マンガ。恋愛話。闘争とギャップ。どう入れるか。メモ2
男性の中で認識されない女性差別。
別に読者がロリコンだとは思わない。十代の読者が十代の主人公を求めることは何ら異様なことではない。二十代三十代四十代が少女にファンタジーを持つのはロリコンではなく自己自身の中の解決されていない少年性がわだかまっている裏返しだ。ロリコンは大人の男が至る倒錯であり本来は少年性とは関係がない。
なぜアクションか。男の子にとって戦うもの=玩具。
こういうメモがさらに延々と続きます。
そして、この種書きを企画書のように他人に見せることを前提にまとめたものを、「骨書き」と呼び、そこからさらに具体的にあらすじを書いたものを「筋書き」と呼びます。
実際に小説を書き始める作業にまで「肉書き」いう呼び名をつけていて、細かいです(笑)。
小説を書くテーマの見つけ方やモチベーションについて
他にも、小説を書くテーマや題材を見つける方法として、「自分が本気で好きだと思うものを可能な限り増やし続けること」と明言し、締め切りを自分で設定して確実に守ることの大切さを説かれています。
そしてこの本の最大の功績は、小説を書くモチベーションを上げてくれることでしょう。
『本書の最大の目的は、小説を、気楽なモノにするということ。
得異な才能や、優れた感性を持った人間にしか小説は書けないという、古式ゆかしいブランドを、いったん無に帰してしまいましょう、と本書を手にしたあなたに提案したいのです。
小説を書くことは、もっと気楽でよい』
と氏は言います。
小説を書くというと、なんだか大げさなことのように感じてしまう人もいると思いますが(僕は感じてしまっていました)、もっと気楽に、たとえばブログを書くようなノリで、ちょっと書いてみようかな~と、多くの人が書き始めれば、その中から面白い作品もたくさん生まれてくるでしょうし、世の中が面白くなっていく気がします!
小説を書きたい人へのメッセージ
最後に、冲方氏からの、小説を書きたい人へのメッセージです。
『人間、書こうと決めれば、案外めちゃくちゃでも、最後まで書けるもんですね。
やはり、実際に書いてみることが一番です。
そのために「自分もやってみるか」という瞬間をつかんでください。
そして、力を込めて書き上げた達成感を、味わってみてください。
病みつきになりますから』
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