小説のアイデアの生まれ方~第4回~「好きな作品を真似る」




マヌエル・プイグというアルゼンチンの作家が書いた『蜘蛛女のキス』っていう作品がありまして、



この作品はほとんど、刑務所に入れられた二人の会話だけで書かれてるんですね。

その形式に衝撃を受けて、他にもこんな本ないのかなあって探してたら見つかりまして、ニコルソン・ベイカーってアメリカの作家の『もしもし』。

これは、男女の電話の会話だけで長編が成り立ってる本で、これも面白かったんですね。

それで、僕もいつかは会話だけの作品を書いてみたいなあってずっと思っていて、しかも書くからには、マヌエル・プイグともニコルソン・ベイカーとも違うタイプの作品を書かなければといろいろ試していて、最近ひとつ会話だけの長編小説が完成して賞にも応募したんです。

ただ書いてみて、なぜ多くのプロの作家が会話だけの小説を書かないのかが分かりました。本当に書くのが面倒でした。

実際にやってみて分かる、ということは多いので、これもまあ一つの経験ですね。

アイデアが浮かぶときっていつも「本当に面白い作品」を読んだ時しか浮かばないんですよ。

つまらない作品をいくら読んでも、それがたとえベストセラーの作品だとしても、僕はそういう作品から刺激をまったく受けないんです。

だから僕はもう、売れてるからとか人気があるからという理由で、本を買ったり映画を観たりすることはなくなりましたね。

 

「売れてる作品はいいものだから売れてるんだ。売れてる作品から、どうやって売れる作品を書けるかを学ぶのが大事なんだ」

 

とか主張する人も結構いますけど、僕は売れてる作品でも自分が好きなものではないと、読んでいて、めまいがして吐き気を催してしまうので無理ですね。

だから大事なのは、真似したくなるような良質のインプットを、いかに継続的にし続けるか。

それと、インプットとアウトプットの時間の使い方のバランスですよね。

インプットだけしてればいいかっていうとそうでもなくて、ただ本を読んだり映画を観ていたりするだけでは、いつまでたっても小説は完成しないんですよ。

また、好きな作品を真似するとパクリになっちゃうかと思いきや、そうはならないんです。というのも、完璧に真似できないから、どうしても自分の癖が出てしまうことにより、オリジナルになっていくんですね。

真似しながらプロの作家のスタイルを学んでいくことができ、それを自分なりに応用していくことができるようになってます。

何を書いていいかわからなかったら、とにかく好きな作品を真似してみるのがいいかと思います。

 

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