(この文章は2017年9月30日に書いたものです)
「小学館文庫小説賞に投稿されたとお伺いしたのですが、本当なんですか?」
「ええ、今日投稿しましたよ」
「そんな、いまだに信じられないんですが。というのも、デパルマ三世さんは先月の八月に、野生時代フロンティア文学賞に長編を投稿したばかりじゃないですか。それから一カ月の間で新たに長編を書くなんてことができるなんて…」
「確かに、大変でしたね」
「しかも今月は小説を書いていただけではないですよね。TOEICの勉強をして試験も受けて、さらに趣味の将棋では最近流行し出した雁木戦法の対策にも時間を取られたと聞きました」
「ええ、雁木は厄介ですね。序盤戦略を根本的に見直さなければいけなくなったので、試行錯誤を繰り返しました。ただ将棋に関しては、最近忙しいので断腸の思いでネットで指すのを禁じるようになりましたね」
「そうだったんですか。それに、最近ヒゲ脱毛もほぼ完了してさらに短髪にして、女の子に台湾のアイドルのロイチュウに似ていると言われているデパルマ三世さん。女性とデートに行く機会も多かったんじゃないですか?」
「そうですね。まあモテてしまうんですよね。どうしたって」
「そんな忙しい生活の中、一カ月で長編小説を書くなんてことが可能なんですか?」
「自分でも正直、今回は間に合わないかもな、と思いましたね。ただ、わたしがときどき使うリサイクル戦法を駆使して、何とか乗り切りました」
「リサイクル戦法というのは?」
「自分で過去に書いた作品を、組み合わせてリメイクしていく方法ですね。わたしは何年も前から、原稿用紙40枚ぐらいの短編はいくつも書いていたんです。ただ短編の新人賞のジャンルはミステリーぐらいしかないので、ミステリー以外の作品はどこの出版社にも送れずにお蔵入りしていたわけです。その手のよくわからないジャンルの作品を、そのままは使えませんがいろいろ改良して、長編に組み込んでいく。このやり方で、ゼロから作品を創らずにすんだわけです」
→長編小説を最後まで書き切るための「リサイクル戦法」についてはコチラ
「なるほど。ですが、昔書いた短編小説を、今書いている長編小説と組み合わせるのは、それはそれで大変なんじゃないですか?」
「大変ですね。難しいパズルをやってるみたいなものですからね。ただ苦しい試練こそ燃えてくるタイプなので。ほら、よく言うじゃないですか。全力で走ったら、向かい風が強くなるのは当たり前だってね」
「凄いですね…」
「それに久々に以前書いた小説を読み返してリサイクルしていく過程で、過去の頑張っていた自分と握手をしているような感覚になりましたね」
「過去の自分と握手とは…。デパルマ三世さんのお話を伺っていると次々と名言が飛び出てきますね。今後の予定はどうするんですか。ちょっと休んで温泉にでも行かれるんですか?」
「いえ、次の作品をもう書いています。次はホラーですね」
「えええええええええええええええええ。だって今回はコメディでしたよね。次はホラーって、全く違うジャンルじゃないですか」
「そうですね。常に変化していくことが、成長だと思っているので。同じことをしていると、自分自身が飽きてしまいますからね。それに私はお金が欲しくて小説を書いているんじゃありません。世界中の子供たちの笑顔が見たくてやってるだけですんでね」
「まったくとんでもないお方だ。脱帽ですよ。これからも応援しておりますので、ぐれぐれも体調には気をつけて頑張ってください」
「はい、それで、その、今回のインタビューの謝礼の方は…」
「あ、お持ちしてますよ。本日はありがとうございした。はい、こちらです」
「いえいえ。少しでも皆さんのお役に立てればいいんですが。ん…、んん」
「どうかされましたか」
「あの、これ図書券ですよね?」
「そうなんです。うちの会社の決まりで、謝礼は図書券でお渡しするということで」
「なんなんだそれは!!現金でくださいよ!しかも謝礼の額も少なすぎる!」
「ちょっと、デパルマ三世さん、落ち着いてください…、顔が怖いですよ、ちょ、ちょっと、あ、ああああああああああ」
(完)
追記
小学館文庫小説賞には形式的に実験をした作品を投稿したんですが、一次選考で落ちました。がっくし。
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