カズオ・イシグロ氏『夜想曲集』の感想・あらすじ・舞台・おすすめ作品




『夜想曲集~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』のあらすじ・舞台




今のところ、日本で出版されているカズオ・イシグロ氏の唯一の短篇集ですね。

5つの短編はそれぞれ舞台も異なり、主人公や登場人物も変わってくるのですが、共通点は音楽がテーマであることです。

1話目『老歌手』のあらすじを書いてみます。

舞台はイタリアのベネチアです。季節はちょうど春に変わろうとする時期。

ギタリストの主人公は、ジプシーのように、いろいろなバンドで演奏する生活を送っていました。

戸外のサンマルコ広場で演奏していると、ミュージシャンのトニー・ガードナーを発見します。

今ではすっかり老人になっていますが、かつては大ヒットした有名な歌手だったのです。

母も大好きだったトニー・ガードナーに、主人公は何とか話しかけます。ガードナーは奥さんと旅行に来ていました。

ガードナーから、主人公はある依頼事をされます。

 

「妻が寝ているホテルの寝室の窓の下にゴンドラを漕ぎ寄せて、君にギターを弾いてもらって、セレナーデを歌って聞かせてやりたい」

 

そんなロマンチックなサプライズの企画が始まります。

そしてガードナーは奥さんとの出会いを語り出します。

主人公は、あることに気づきます。どうやらこの夫婦は、今はあまり関係がうまくなっていないようで…。

不穏な空気の中、サプライズが始まります。

果たして、うまくいくのでしょうか。

 

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『夜想曲集~音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』の感想

面白い短編集を書くのは、面白い長編を書くよりも難しいかもしれないと思います。

歴史に残るような名作や、ベストセラーになる本は、大抵長編ですからね。

短編でインパクトを出すのは、優れた作家でも、とても難しいと思います。

「夜想曲集」はカズオイシグロ節が炸裂していて、とても楽しく読めました。

 

カズオイシグロさんの作品に共通しているテーマは「記憶」です。

 

『わたしを離さないで』や『日の名残り』と同じように、登場人物は過去を回想していくのですが、今回の短編でも、やはり記憶は大事なテーマの一つでした。

僕は特に、最初の3つの短編(『老歌手』、『降っても晴れても』、『モールバンヒルズ』)が好きでしたね。

そしてこの短編集では、繰り返し同じシチュエーションが描かれます。

五人の主人公は、音楽家の道を志していて、大体くすぶっています。

売れるミュージシャンにはなれていなかったり、離婚したばっかりだったり。

 

その決して順風満帆ではない主人公が、関係に問題が起こっているカップルや夫婦の間に挟まれ、そこで何かをしなければならない状況に追い込まれます。

 

たとえば第二話「降っても晴れても」では、ある喧嘩中の友人の夫婦から依頼があります。

「よし、レイ、聞いてくれ。頼みごとってのはいたって簡単だ。これから二、三日、エミリのそばにいてやってほしい。愉快な客人であってくれ。それだけだ。おれが帰ってくるまで、頼む」
「それだけ? 君の留守中、エミリの面倒を見ていればいいのかい」
「そうだ。というより、おまえは客なんだから、エミリに面倒を見させればいい。おれもいろいろと手配はしておいた。劇場の切符とかな。遅くとも木曜日には帰ってくるから、それまでにエミリの気分をほぐして、上機嫌にしておいてほしい」

~『夜想曲集』カズオ・イシグロ著より引用~

主人公は困難な状況を、すぱっと解決できるようなスーパーマンではありません。

主人公はただその場所にいて、間に挟まれ、少しでも状況を良くしようと努力し、いろいろ右往左往して、そして時は流れていきます。

わびさびがあり、余韻の残る作品集でした。



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