注:この文章は、2008年9月29日に書かれたものです。
夕食を何にしようか迷いながら、オレは自転車をこいでいた。
おっと、言い忘れていたが、これは昨日、9月28日(日曜)のできことである。
あるラーメン屋の前を通りすぎた。店の名前は『エイト』。
「そうだ!今日はエイトの日だった」
オレの体中に、電流が走ったかのような衝撃が起こった。
この『エイト』という店の存在を知ったのは、10日前の9月18日。
偶然立ち寄ったその店では、毎月8のつく日がサービスデイになっていて、通常価格650円のラーメンがなんと350円で食べられるのである。
オレは10日前のその日に、半信半疑で350円のラーメンを食べた。どうせ安いからうまくはないだろうと思っていたが、食べてみるととてもうまかった。オレはとても得をした気分で店を後にしたのだった。
「今日は28日だ。間違いない。エイトの日だ」
店の前に張ってあるポスターにも、8のつく日はサービスデイという旨が宣伝されている。
「なんてラッキーなんだ」
そう思いながら店に入った。
今思えば、異変は店に入ったときから、既に起こっていた。
20人ほどが入れるその店には、お客が一人しかいなかったのだ。
「おかしい、まだ夜の九時過ぎだぞ。今日は10日に一回のサービスデイなのに、なんでこんなに空いているんだろう。十日前は満員だったのに」
そんな疑問が浮かんできた。
しかも、しかもである。
その唯一いる客が、ラーメンではなく、定食を食べていたのだ。
もうほとんど食べ終わっていたので何定食かは分からなかったが、ラーメンでないことは確かだった。
「なぜだ。なぜラーメンがサービスで安くなる日に、わざわざ通常価格のものを食べるんだ…」
そんな疑問が頭をよぎった。だが、オレはその日とても疲れていた。仕事のあとに『アイアンマン』という映画を観ていて、もう早くご飯を食べて帰りたかった。
余計なことは考えたくなかった。オレはラーメンを頼もうとした。そのとき、ラーメン+半チャーハンセット(680円)にも、かなり心を惹かれた。
「ラーメンだけではお腹がすくかもしれない。ここは半チャーハンも頼むべきなのか…」
だが、ラーメン+半チャーハンセットは、通常の価格だった。わざわざサービスデイに頼むのはもったいない。そう思い、結局ラーメンだけを食べた。
「うまい。これで350円は本当に安い!これが通常価格の650円だったら高い気もするが、まさか350円だとは。素晴らしすぎる…」
そして会計に行って勘定を払おうとした。
すると店員が
「650円になります」
とつぶやいた。
「えっ!?」
とオレは聞き返した。オレの聞き間違いだと思ったのだ。
「650円になります」
店員が、今度は、はっきりとした声で言った。
「えっ、だって今日サービスデイですよね。エイトの日だから350円ですよね」
「いや、今回は『ふりかえエイトの日』なんです」
ふりかえエイトの日…
ナニヲイッテイルンダ、コノヒトハ
「8がつく日が、日曜と祭日の場合は、次の日がサービスデイになるんです」
「あ、そうだったんですか…」
オレはしぶしぶ650円を支払った。
そんなの聞いてねえよ、と思いながら店を出た。店の前のポスターを見ると、確かに隅のほうに、『ふりかえエイトの日』についての説明が書いてあった。
なんだ、オレがこれを見逃しただけか…
と、一度は自分のミスだと思いかけた。
だが、だがしかし!!
やはりこれは店の責任なのではという考えがメラメラと燃え上がってきた。
オレは二つの仮説を考えてみた。
仮説その1
『店舗名、誇大広告説』
何度もいうがこの店の名前は『エイト』である。そしてサービスデイは8のつく日である。つまり、店の名前からしてサービスデイをめちゃくちゃアピールしているのである。例えば、店の名前が『ラーメン太郎』みたいな普通の名前だったら、まだ許せる。
しかし、『エイト』という名前にした以上、なにがなんでも8のつく日をサービスデイにすべきではないか。日曜だろうが、クリスマスイブだろうが、大災害が起ころうが…。
仮説その2
『店員のアカウンタビリティ(説明責任)説』
この店のラーメンの通常価格は650円である。
そしてラーメン+半チャーハンセットは680円である。
よく見比べてほしい。
650円と680円。
30円プラスするだけで半チャーハンが食べられるのである。つまり、よほどのことがない限り、ラーメン単品で頼むよりは、半チャーハンをセットにしたほうが得なのだ。
それなのにオレがラーメンだけを頼んだという時点で、おれがサービスデイだと勘違いしていると、店員は気づいていたはずなのだ。よって、
「あ、お客さん、今日は28日なんですけど、サービスデイじゃないんですよ。サービスデイは明日なんです。だからラーメンは650円になりますけどそれでもよろしいですか?」
と聞いてくれさえすれば
「あ、そうだったんですか。なんとまあ私としたことが。そりゃそうですよね。日曜までサービスでやってたら、商売になんないですもんね。アハッハハッハ。そりゃそうだ。アハハハハハ。なんだか愉快な気分になってきましたよ。店長!この店で一番高い料理を持ってきてください!」
とまあ、こんな感じの展開になったはずなのである。
だからやはり店側が悪かったのではないか。
いや、
違う…。
悪いのはオレだ。
オレが自分で勘違いしただけなのに、こんな風にいろいろ責任転嫁したりして、オレは人間として最悪だ。
本当に人として最悪だ。
やりなおそう。
一からやりなおそう。
一からといわず、八からやりなおそう。
10日後の10月8日に、もう一度この店を訪れようと思っている。(完)
(ちなみに今日はふりかえエイトの日でサービスデイだったんですが、行きませんでした)
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