『悪の教典』や『黒い家』で魅力的な悪役を作ってきた貴志祐介さんの、悪役の描き方を『ミステリーの書き方』(日本推理作家協会編著)より引用して紹介していきますよ!
貴志さんによると悪役には特権が3つあるので、書いていて楽しいそうです。
悪役の三つの特権について
1『逆張りの余得』
ストーリーの進行は、偶然と必然を適度にブレンドして行わなければならない。
すべてをピタゴラ装置のような必然に設定すると、プロットの構築が大変になる上、かえってリアリティがなくなり、踏んだり蹴ったりである。よって、何らかの偶然の要素は必須である。
ところが読み手の意識の中では、ここで奇妙な現象が起こる。主人公にとってちょっとでも有利な偶然は、ご都合主義とて厳しく指弾されるのに、不利な偶然は、比較的寛大に許容されるのだ。
2『半ば不可視であることの恩恵』
例外もあるが、悪役は、ミステリアスでなければならない。底を割ったらおしまいで、その時点から、読者の興味は離れていく。
したがって、主人公とは違って、悪役の行動は、何から何まで描写されることはない。
囚われの身の主人公が、どんな手を使ったかあきらかにすることなく敵のアジトを脱出したら非難轟々だろう。だが、同じことを悪役がやると、「恐ろしい奴だ」ぐらいで許してもらえるかもしれない。
3「不良の善行」効果
真面目な優等生が教室のゴミを拾ったとしても、さほど感心されないが、後頭部まで届く剃り込みを入れたヤンキーが同じことをしたら、どうだろう。
一躍、好感度が急上昇することは間違いない。
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貴志祐介氏の悪役の描き方についての感想
1『逆張りの心得』について
一番思ったのは、福本信行先生の傑作麻雀漫画『アカギ』で、敵の鷲巣巌が「生まれ持っての強運」みたいなよく分からん理由でツキまくって、アカギがピンチに追い込まれるシーンがあるんですけど、確かに敵のラッキーは矛盾を感じずに読めましたね。
これが主人公がラッキー過ぎたら、読んでて冷めるでしょうね(「ラッキーマン」を除く)。
2『半ば不可視であることの恩恵』について
本では『羊たちの沈黙』のレクター博士の脱出シーンを例に出していましたが、僕が感じたのは漫画「グラップラー刃牙」の主人公刃牙のお父さんの「範馬勇次郎」とかがまさにそうですよね。
この人が普段どんな生活をしているのかよく分からない、というミステリアスさが魅力を増してる気がします。
3「不良の善行効果」について
これは良く聞く話ですよね。実生活でも僕が納得がいかないことの一つなのですが、まあいいでしょう。
やはり悪役が魅力的な作品は、小説で漫画でも映画でも、面白いものが多いですよね。
貴志祐介氏はロジックを固めてキャラクターやストーリーを作っているということが良く分かりましたね。
自分でも強大な悪を描けるように、研究を続けていきたいと思います!
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