何かの物語論で書いてあったのですが、小説というのは基本的には「目的」で引っ張るか「謎」で引っ張るかのどちらかだ、ということらしいんですね。
目的というのはたとえば、桃太郎が鬼退治に行く、などですよね。
謎というのはたとえば、なぜ恩返しに来たこの人は絶対に機織りを見てはいけないというのだろう、とかですよね。
謎で引っ張る、なぜ?と考えさせる。それがすなわち、「why系」なんですね。
それでは、『ショートショート広場9』(阿刀田高:選)の60作品のうち、僕が独断と偏見で選んだ第一位の作品を発表します。
→「ショートショートの書き方~第1回~「if系」の創作について」はコチラ
→「ショートショートの書き方~第2回~「形式系」の創作について」はコチラ
目次
第一位 『チキンレース』 影 洋一さん
この作品は選考委員の阿刀田高先生も絶賛しておられましたが、僕も驚愕しました。
話は身の回りに起こりそうな、ちょっとしたことから始まります。
引用します。
バスを降りようと席から立ち上がった時、仁志は視界の隅に一人の男が立ち上がるのを認めた。てっきりこの停留所で降りるのは自分だけだと思っていたので、正直びっくりだった。
(おれがボタンを押さなければ、この男はどうしたのだろう?)(~省略~)
(きょうは、あの男に降車ボタンを押してもらうことにするか)
しかし、いっこうにボタンは押されない。停留所はどんどん迫っている。仁志は男を見た。優雅に新聞を読んでいる。
(もうダメだ)
たまらずに仁志は降車ボタンを押した。。
バスが停留所に着くと、仁志に続いて男も降りた。男は何食わぬ顔で平然としている。仁志は横目で男をにらんだ。
(この野郎。自分では絶対にボタンを押さないつもりだな)
仁志はリベンジを誓った。
この話のwhyは、「バスに一緒にいつもいる男は、なぜ自分から降車ボタンを押さないのか?」であり、「では自分が降車ボタンを押さなければどうなるのか」の挑戦が始まるわけです。
僕はこのwhy系の作品を考えるのがとても苦手ですね。というのも、謎を広げるのはできるとしても、その謎にちゃんとした解決を作らないと読者は納得しないので、物語の着地がとても難しいんです。
ショートショート『チキンレース』影洋一さん(著)はラストとオチのどんでん返しがすごい!
『チキンレース』はラストのどんでん返しがとてもうまくて、ショートショートの神髄を堪能しました。
こういうスパッと切れ味のあるオチにときどき出会えるから、ショートショートを読むのは止められないんですね。
今回、「if系」「形式系」「why系」と三つのショートショートの書き方を紹介しまして、他にも「トラブル系」「純文系」「シュール系」「擬人化系」など、まだまだいろいろな書き方があるのですが、それはまた別のお話。
また別の機会に、話すことにしましょう。
詳しいショートショートの書き方をnoteで紹介しています!
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